PublicationsAI論文(胃)NBI拡大内視鏡検査における早期胃がん診断へのAI適用2022/08/31

Application of artificial intelligence using a convolutional neural network for diagnosis of early gastric cancer based on magnifying endoscopy with narrow-band imaging(Gastroenterology and Hepatology・2021年)
順天堂大学医学部附属順天堂医院・上山浩也先生

本論文は順天堂大学医学部附属順天堂医院・上山浩也先生先生が『Gastroenterology and Hepatology』誌(2021年)に発表した「NBI拡大内視鏡検査における早期胃がん診断への畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能の適用」に関する論文です。

サマリー

はじめに

狭帯域画像拡大内視鏡(ME-NBI)は臨床現場において非常に有用ですが、早期胃がんの診断には一定の知識・経験が必要でした。近年、ディープラーニングや畳み込みニューラルネットワークを用いたAI技術が医療分野で目覚ましい発展を遂げており、本研究ではME-NBI画像に基づいて早期胃がんを診断するコンピュータ支援診断(CAD)システムを構築し、その診断精度を検証しました。

研究方法

内視鏡画像5,574枚(早期胃がん3,797枚、非がん1,777枚)を用いて機械学習させたCADシステムを作成し、検証画像2,300枚(早期胃がん1,430枚、非がん870枚)に対する診断精度を検証しました。

結果

CADシステムは2,300枚の画像を計60秒で解析し、精度98.7%、感度98%、特異度100%、陽性反応的中率100%、陰性反応的中率96.8%でした。
誤診されたのは質の悪い画像や表面的に陥凹を認めるもの、経験豊富な内視鏡医でも胃炎との鑑別が困難な病変でした。

結語

CADシステムは短時間かつ高精度でME-NBI画像のEGCを診断できました。臨床においてもCADシステムは早期胃がんの診断に有用であると期待されます。

以下は本論文の詳細です。

研究方法

内視鏡画像5,574枚(早期胃がん3,797枚、非がん1,777枚)を用いて機械学習させたCADシステムを作成し、検証画像2,300枚(早期胃がん1,430枚、非がん870枚)に対する診断を行い、精度、感度、特異度、陽性反応的中率、陰性反応的中率を評価しました。

教師データ

267名の患者から得られた3,797枚の分化型早期胃がん画像と1,777枚の非がん画像を教師データに用いました。
がん画像として採用した早期胃がん病変は順天堂大学医学部附属順天堂医院で内視鏡的切除を受けた症例を対象としました。胃底腺型胃がん、びまん性胃がん及び解析不能・低品質な画像は除外しました。

検証データ

82名の患者から得られた1,430枚の早期胃がん画像と870枚の非がん画像を検証しました。非がん画像には胃底腺、幽門腺、斑状発赤、腺腫、黄色腫、限局性粘膜萎縮、胃潰瘍瘢痕などが含まれました。

AIは各画像に対し0から1までの連続した数値を生成し、がん/非がんのカットオフ値を0.5として診断しました。

結果

● CADシステムは1秒あたり38.3画像を処理しました。
● ROC-AUCは99%でした。
● 12病変を撮った29枚の画像を非がんと誤診しましたが、うち6病変は経験豊富な内視鏡医でも腸上皮化生や胃炎との鑑別が難しい病変でした。
● 他6病変の画像は出血、低倍率、フォーカス不足でした。
● CADシステムががんと診断した領域は、概ね内視鏡医の診断と一致していました。

CADシステムの診断性能

CADシステムの診断性能

結語

CADシステムは早期胃がんのME-NBI診断において、非常に効率的で高い診断精度を示しました。CADシステムは、将来的には実臨床で応用できる可能性があります。
近い将来、CADシステムが日常臨床における早期胃がんのME-NBI診断を支援してくれることを期待しています。