PublicationsAI論文(大腸・小腸)CNNによる大腸内視鏡部位分類2022/08/31

Automatic anatomical classification of colonoscopic images using deep convolutional neural networks(Gastroenterology Report・2020年)
仙台厚生病院・齋藤宏章先生

本論文は仙台厚生病院・齋藤宏章先生が『Gastroenterology Report』誌(2020年)に発表した「CNNによる大腸内視鏡部位分類」に関する論文です。

サマリー

はじめに

全大腸内視鏡検査(Total colonoscopy; TCS)は大腸疾患の検出に有用です。大腸疾患の診断、治療において、病変が大腸のどの部位に存在するかは重要な情報ですが、内視鏡画像から部位を判定するには高い技術と経験を必要とします。本研究ではニューラルネットワーク(Convolutional neural network; CNN)を用いて大腸内視鏡画像からその部位を分類するシステムを構築し、感度、特異度、精度について検証しました。

研究方法

大腸内視鏡画像409例9,995枚を用いて機械学習させたCNNを開発し、検証画像118例5,121枚の観察部位を回腸末端、盲腸、上行結腸および横行結腸、下行結腸およびS状結腸、直腸、肛門に分類し、感度、特異度、精度を評価しました。

結果

● CNNが分類に要した時間:0.0017秒/画像。
● CNNによる分類の感度:回腸末端 69.4%、盲腸 49.8%、上行結腸および横行結腸 51.1%、下行結腸およびS状結腸 90.0%、直腸 23.3%、肛門 91.4%
● CNNによる分類の特異度:回腸末端 99.3%、盲腸 98.2%、上行結腸および横行結腸 93.8%、下行結腸およびS状結腸 60.9%、直腸 98.1%、肛門 97.8%。
● CNNによる全体の精度:66.6%。

結語

CNNは大腸内視鏡の部位分類において良好な性能を示しました。将来的には大腸内視鏡検査をサポートするシステムとしての応用が期待されます。

以下は本論文の詳細です。


研究方法

教師画像409例9,995枚を用いて機械学習させたCNNを開発し、検証画像118例5,121枚の観察部位を回腸末端、盲腸、上行結腸及び横行結腸、下行結腸及びS状結腸、直腸、肛門に分類し、感度、特異度を評価しました。
CNNの分類の診断閾値を変化させて、分類の感度と特異度をプロットしROC曲線を作成し、ROC曲線下部の面積(ROC-AUC)を評価しました。

教師データ

大腸内視鏡画像409例9,995枚。
2名の内視鏡専門医が各画像の観察部位を回腸末端、盲腸、上行結腸及び横行結腸、下行結腸及びS状結腸、直腸、肛門、識別不能の7つに分類し正解ラベルとしました。

検証データ

大腸内視鏡画像118例5,121枚。
教師データと同じく2名の内視鏡専門医が各画像を分類しました。検証データには部位の識別不能な画像は含まず、回腸末端、盲腸、上行結腸及び横行結腸、下行結腸及びS状結腸、直腸、肛門の6つに分類しました

検証データに含まれた内視鏡画像の部位の内訳
回腸末端 209枚
盲腸 423枚
上行結腸/横行結腸 1,742枚
下行結腸/S状結腸 2,081枚
直腸 467枚
肛門 199枚

CNNは各画像につき、各部位への分類の確かさを表す0からの1までの確率スコア(Probability score; PS)を付与しました。各画像において最高のPSを示した部位をその画像の観察部位として分類しました。

結果

● CNNが分類に要した時間:0.0017秒/画像でした。
● CNNの分類精度:66.6%(3,410/5,121枚)でした。PSが99%を超える画像(507/5,121枚)では精度は91.7%と高い一方、PSが50%を下回る画像(372/5,121枚)では精度は36.6%と低いという結果でした。

CNNの感度、特異度

CNNの感度、特異度

CNNのROC-AUC

CNNによる分類のROC-AUCは以下の通りで、いずれも0.8を上回りました。
CNNのROC-AUC

4分類(回腸末端、右側結腸、左側結腸、肛門)におけるCNNの感度、特異度

4分類(回腸末端、右側結腸、左側結腸、肛門)におけるCNNの感度、特異度

結語

本研究では、大腸内視鏡画像の解剖学的位置を考慮した新しいCNNシステムの臨床における性能を明らかにしました。これは大腸内視鏡検査をサポートし、内視鏡手順の質を保証するためのCADシステムを構築するための第一歩である。