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本論文は東京大学医学部附属病院 ・ 青木智則先生が『Gastrointestinal Endoscopy』誌(2019年)に発表した、「CNNを活用したカプセル内視鏡画像のびらん・潰瘍の自動検出」に関する論文です。
Automatic detection of erosions and ulcerations in wireless capsule endoscopy images based on a deep convolutional neural network
はじめに
カプセル内視鏡は1症例ごとに膨大な量の画像が撮影されるため、医師の読影負荷は大きい一方、これまでコンピューターの支援による検出方法が確立していませんでした。
本研究ではSingle Shot MultiBox Detector(以下、SSD)注1)アーキテクチャに基づいたConvolutional Neural Network(以下、CNN)注2)を開発し、学習と検証を実行しました。なお、CNNアーキテクチャはCaffeフレームワーク 注3)で実現しました。
上記を活用して、カプセル内視鏡画像のびらんや潰瘍の自動検出を行いました。
研究方法
5,360枚のびらん・潰瘍のあるカプセル内視鏡画像を学習させたCNNを開発しました。検証画像10,440枚に対するCNNの検出性能(AUROC、感度、特異度、精度)を評価しました。
結果
● AUROCは 0.958でした。
● CNNの感度は88.2%、特異度90.9%、精度90.8%でした。
● CNNは検証画像10,440枚を233秒で判定しました。
考察
本研究は、病変の見逃しや医師の負担軽減のため日常的に使用するカプセル内視鏡画像診断ソフトウェア開発への重要なステップとなる可能性があります。
注1)Single Shot MultiBox Detector(SSD)
機械学習を用いた一般物体検知のアルゴリズム。 深層学習の技術を使い、多種類の物体を高速で検知する
注2)畳み込みニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)
人間の脳の神経細胞ネットワークを模倣し、数理モデル化したものの組み合わせ。
注3)Caffeフレームワーク
オープンソースのディープラーニングライブラリ。画像認識に特化しており、高速処理が可能。
研究方法
5,360枚のびらん・潰瘍のあるカプセル内視鏡画像を学習させたCNNを開発しました。検証画像10,440枚に対するCNNの性能(AUROC、感度、特異度、精度)を評価しました。
教師画像
● びらん・潰瘍のある小腸の画像115症例5,360枚。
● カプセル内視鏡は、Pillcam SB2 または SB3を使用。
検証画像
● 65症例10,440枚。内訳:正常粘膜 10,000枚、びらん・潰瘍 440枚
内視鏡専門医2名が病変(びらん・潰瘍)を長方形の矩形でアノテーションした。
評価方法
● 専門医2名が手動でマークした正解の矩形をTrue box、CNNが判定したびらんや潰瘍の矩形をCNN boxとした。CNNはびらん・潰瘍の確率スコアを出力した(範囲:0~1。1に近いほど確信度が高い)
● CNN boxとTrue boxの重なる部分が70%以上の場合や、1つの画像の中に複数のCNN boxがあり、そのうち1つでもびらん・潰瘍を検出した場合は正解とした
● 検証画像の評価
- 〇 泡、debris、胆汁による不明瞭さ(obscuration)の度合
- 〇 視認できる粘膜(visualized mucosa)の割合
- 〇 びらん・潰瘍の大きさ(5mm以上と5mm以下)
結果
CNNの性能
● びらん・潰瘍検出のAUROCは 0.958
● CNNは感度88.2%(440枚中388枚が正解)、特異度90.9%(10000枚中9090枚が正解)、精度90.8%
● 確率スコアのカットオフ値:0.481
● CNNは検証画像10,440枚を233秒で判定(1秒あたり平均44.8枚)
● 2回検証を行ったところ、1回目と結果が完全に一致した
偽陰性と偽陽性の原因
偽陰性52例
● 境界が不明瞭な病変(33病変)
● 正常粘膜と同じ色の病変(11病変)
● 小さな病変(6病変)
● 部分的に写っている病変(2病変)
偽陽性910例
● 正常粘膜(347病変)
● 泡(228病変)
● debris(216病変)
● 血管拡張(119病変)
専門医は病変を認識できなかったが、CNNは正しく病変(びらん)を拾い上げたケースが3例あった。
偽陰性となった画像の検証
● obscurationが5%以上だった画像は、5%未満だった画像よりも偽陰性率が高かった(19.4% vs. 8.5%)
● visualized mucosaの割合やびらん・潰瘍の大きさと偽陰性率との関連はみとめられなかった。
考察
本研究は、病変の見逃しや医師の負担軽減のため日常的に使用するカプセル内視鏡画像診断ソフトウェア開発への重要なステップとなる可能性があります。