Article医療AIROC曲線及びAUCについて2022/09/21
目次
ROC(receiver operating characteristic)曲線は感度・特異度の解析で大変よく使われるグラフである。第2次世界大戦中のレーダーの感度を調整するために開発されたグラフであることが名前の由来である。①ある検査値をどこから陽性とするのが最適かを判断するために使用される他,②検査マーカーの全体的な性能を評価するためにも使用される。
以下に,例を示しながら説明する。
上のグラフはある検査A(点線—-)と検査B(直線ー)のROC曲線である。あるカットオフ値で検査の陽性を判断したときの感度を縦軸に,同じカットオフ値で得られる特異度を1から引いたものを横軸にとったものである。
①ある検査値をどこから陽性とするのが最適かを判断一般に,検査のカットオフ値を小さくすれば感度は高くなるが同時に特異度は低くなってしまい,逆もまた然りである。このようにトレードオフの関係にある感度,特異度を両方加味して最適なカットオフ値を導出するためによく用いられる方法として,カットオフ値を感度+特異度が最大になる点(Youden index)に設定するものがある。(上の図では,検査Aではカットオフ値7.5/検査Bではカットオフ値5.5)ただし,この方法では感度,特異度を同等の重要性として判断している。検査によって,見逃しが致命的になる場合は,感度を優先すべき場合なども存在することに注意を要する。
②検査マーカーの全体的な性能を評価
ROC曲線の下エリアの面積をAUC(area under the curve)と呼び,検査マーカー全体としての性能を評価するためにしばしば利用される。これが1に近いほど性能が優れていることになる。上の図で計算すると検査Aでは0.836,検査Bでは0.778である。このことから,検査Aは検査Bと比較して検査自体の全体的な性能が高いと言える。
しかし,これ以上の情報が得られず,近年はROCの他にcalibrationプロットと呼ばれる手法を使用することも多い。
Mayoスコア
Mayo スコアは,潰瘍性大腸炎に対する 5-Aminosalicylic Acid内服治療の有効性と安全性を評価するために開発された指標であり*1),近年の大規模臨床試験にて最も採択されている指標である。
近年の大規模臨床試験にて最も採択されている指標である。具体的な項目は以下の表の通りである。
1.排便回数 | スコア | 3.粘膜所見 | スコア |
正常回数 | 0 | 正常または非活動性所見 | 0 |
正常回数より1-2回/日多い | 1 | 軽症(発赤,血管透見像の減少,軽度脆弱) | 1 |
正常回数より3-4回/日多い | 2 | 中等症(著名に発赤,血管透見像の消失,脆弱,びらん) | 2 |
正常回数より5-回/日多い | 3 | 重症(自然出血,潰瘍) | 3 |
2.血便 | スコア | 4.医師による全般評価 | スコア |
血便なし | 0 | 正常 | 0 |
排便時の半数以下でわずかに血液が付着する | 1 | 軽症 | 1 |
ほとんどの排便時に明らかな血液の混入がみられる | 2 | 中等症 | 2 |
大部分が血液である | 3 | 重症 | 3 |
参考)第二版炎症性腸疾患の疾患活動性評価指標集*2)
カットオフ値は厳密に定義されていないが,3-5 / 6-10 / 11-12 の三段階でそれぞれMild/Moderate/Severeとすることが多い。
簡便で頻用されている一方、妥当性に関する検討はなされておらず、基準の統一はなされていない。
*1.Coated Oral 5-Aminosalicylic Acid Therapy for Mildly to Moderately Active Ulcerative Colitis Kenneth W. Schroeder, M.D. et al.
*2.第二版炎症性腸疾患の疾患活動性評価指標集 http://www.ibdjapan.org/pdf/doc07.pdf