Article医療AIAIに革新をもたらした深層学習とは?2022/08/31

AIに革新をもたらした深層学習とは?

目次

医療業界に携われる皆さんも、ここ数年でAI(人工知能)に関するニュースを耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。そのAIの躍進を支えているのが、深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)です。この技術はAIに数多くのブレイクスルーをもたらし、現代のAI開発には欠かせないものとなっています。当記事では「深層学習」に焦点を当てて解説を行います。

深層学習とは?

深層学習とは機械学習のひとつで、大量のデータからコンピューターがその特徴を自動的に導き出す技術のことです。

従来の機械学習と深層学習の違い

従来の機械学習と深層学習の違い

従来の学習方法では、AIが対象データから特徴を抽出する上で必要な特徴量を人間が定義づけし、モデル構築を行っていました。しかし、言語化や分類が極めて難しい対象データの場合、特徴量を適切に抽出できないため、精度の高いモデル構築を行うことができませんでした。

一方で、深層学習ではこの特徴量の推定をAI自身が自動的に行います。全処理段階で入力された覚え込ませたいデータを基にAIが特徴量を定義し、それを基にAIが自動的にモデルを構築し、学習を行います。この技術によって、従来は人間では定義が難しかった特徴量の抽出を機械が行えるようになり、AIの分析の幅と精度が格段に向上したのです。

そして、AIが自動的に特徴を発見できることを可能にした画期的な技術が、CNN(Convolutional Neural Network)=畳み込みニューラルネットワークです。

ニューラルネットワークという数学モデルが、深層学習を可能にしました。

CNN・畳み込みニューラルネットワークとは?

技術の仕組み

ニューラルネットワークは脳の神経回路を模した数学モデル(機械学習のひとつ)で、ニューラルネットワークを多構造化し学習能力を高めたものをCNN(Convolutional Neural Network)=畳み込みニューラルネットワークと呼びます。
CNNは「フィルタ」(下記図表の赤の部分)を駆使して入力データの部分構造の検出を行います。この検出プロセスが何層にも重なり合っているのがCNNの特徴です。覚え込ませたデータを基にして、多層構造のニューラルネットワークを通じて入力データの特徴を捉え分類を行います。

CNNの仕組み

CNNが正しく機能するために必要なことは、「学習データの質」を確保することです。対象データから特徴量を自動で抽出してモデル構築を行うCNNの技術は非常に革新的です。しかし、前提には「正しい情報を正しく認識できること」があります。だからこそ、学習に用いるデータの質の確保が不可欠です。

深層学習が実用化されるまで

第2次AIブーム

深層学習の基礎であるニューラルネットワークを使った試みは、1980年代から90年代の第2次AIブーム時に溯ります。その時代に、3層型ニューラルネットを利用した取り組みが始まりましたが、対象データによっては特徴量を推定したり、計算の規模が爆発的に増大し、実用化のレベルにまで至りませんでした。

第3次AIブーム

その後、2010年代にかけて3つの要因が重なり深層学習が発展し、実用化に至りました。1つめは、ニューラルネット技術の進歩です。2つめは、計算におけるメモリー容量と計算速度の向上です。これによって、従来であれば計算量が多く演算処理ができなかった対象データでも扱えるようになりました。最後に、大規模な正解データの流通です。AIが正しく機能するためには、正しいデータを覚えることが前提になります。参照したデータが正しくなければ正しい推定を行うことはできません。

これら3つの進歩を経て、深層学習の近年の社会実装へと繋がっていきいました。

深層学習が応用されている分野

深層学習が応用されている分野は、大きく分けて3つあります。

画像認識:入力した画像に対してAIが分析を行い、それが何の画像を示しているのかを推定します。
音声認識:入力された音声情報を識別し、認識した内容に対する出力を行います。
機械翻訳:入力された言語を解釈し、別の言語に翻訳したり、言語情報を読み取ります。

その他にも、囲碁やチェスなどの計算分野にも深層学習は応用されており、AIが人間を勝る場面も見られるようになりました。

医療分野で期待されること

これまでは深層学習の仕組みや一般的な応用事例について紹介してきました。最後に、医療分野において、深層学習の活用が期待されることについて取り上げます。

深層学習を用いたAIが持つ画像認識力は、条件によっては人間の認識力を超えるケースがでてきています。医療分野ではその画像認識力を活かし、MRI画像や内視鏡画像などの深層学習を通じて、病変の検出・鑑別支援の研究が進んでいます。当社AIメディカルサービスでは、内視鏡医でも見逃してしまう可能性が高い早期胃がんの検出・鑑別のプロセスを支援することを目指したAIの開発に取り組んでいます。また、厚生労働省においても希少疾患の診断の向上を目的とするAIプロジェクトを行っています。

今後の医療診断において、AIによる支援が当たり前になる日はそう遠くないかもしれません。