Article内視鏡医消化器内視鏡の診断・治療法を専門医が解説、広島大が全国実技セミナーを23年も開催2022/12/13

消化器内視鏡の診断・治療法を専門医が解説、広島大が全国実技セミナーを23年も開催

目次

胃がんや大腸がんの内視鏡検査数・内視鏡治療において、全国トップレベルの広島大学病院。上部消化管の内視鏡検査数は、過去30年間でほぼ右肩上がりで増加し、直近で1万件を超えています。

また最新の設備を備えた内視鏡トレーニングセンターを2021年に新設するなど、教育・研修活動にも注力。「内視鏡の診断学や治療手技は、年々高度になっているため、昔と比べると高度な知識や技術が要求されます」と、広島大学病院の田中信治教授(内視鏡診療科長)は話します。

消化器内視鏡の教育活動に力を入れる広島大学病院は、毎年実施している全国規模の内視鏡セミナーを2023年も開催します。

ライブセミナー、基本手技の標準化がテーマ

広島消化管内視鏡ライブセミナーは、「基本手技の標準化」をテーマとして年1回開催。コロナ禍などやむを得ない事情で過去に2回中止になっていますが、開始してから17年の歴史があります。上部消化管から大腸までの消化管を対象に、以下のトピックなどに関する基本手技や応用をカバーしています。

  • 大腸内視鏡挿入法
  • 精密内視鏡診断(通常観察・拡大観察・NBI観察・EUSなど)
  • 治療(EMR/EPMR/ESD)

第16回セミナーの予定

会期:2023年8月19日(土)9:00〜17:00
会場:広島大学霞キャンパス・医学部第5講義室
昨年は、田中先生をはじめ、全国からエキスパートの先生方が術者や講師として参加されました。

消化管内視鏡治療のハンズオンセミナーも

広島EMR/ESDハンズオンセミナーは、特に初学者を対象にした消化管内視鏡治療の研修を目的として実施。動物の切除胃や大腸を用いながら、EMRとESDの手技をハンズオン形式で解説し、マンツーマンで実技指導します。このセミナーも1年に1回毎年行っています。

第12回セミナーの予定

会期:2023年10月14日(土)10:00〜17:00
会場:広島大学霞キャンパス・広仁会館

大腸がん検診受診率の向上と、それに対応するための大腸内視鏡医の育成が急務

このように消化器内視鏡医の教育活動に積極的に取り組む広島大学病院。一方で国内の内視鏡事情については、大腸内視鏡医の育成が急務だと、田中先生は話します。

本邦の大腸がんによる死者数は、肺がんに次いで第2位。その大きな要因は大腸がん検診の受診率の低さにあると、田中先生は指摘します。

「統計によって異なるため一概には言えませんが、検診に積極的な米国では、受診率が約8割に上る一方で、日本の受診率は約3割前後にとどまります。人口が米国の3分の1の日本が、これまで世界の大腸がん大国だった米国を逆転し、大腸がん死亡者数が多くなっています。先進国の中で、日本は大腸がん死亡者数が多い国として位置づけられています」。 

しかし、仮に受診数が増えたとしても、大腸内視鏡検査やESDなどの内視鏡治療件数の増加分に対応できる医師が不足している、という問題もあるようです。「特に、内視鏡を縦横無尽に扱い大腸深部まで挿入できる技術がないと、高度な治療もできません。つまり大腸内視鏡診療において、正しい挿入法の修得は必須です」。

いずれにしても、大腸がん検診の受診数増に向けた患者さんに対する啓蒙活動と、内視鏡医に対する教育活動の両輪をまわしていくことが重要だといいます。