Article内視鏡医がんの早期発見に注力、「一例一例に苦痛なく精度の高い内視鏡を」…木村哲夫先生2022/09/02
クリニックグリーンハウスは、高知県高知市にある内科のクリニック。外来診療では、消化器疾患を中心に幅広く対応する一方で、人間ドックや検診における「疾患の早期発見や予防」に特に力を入れています。
「病気の早期発見」へのこだわりについて、院長を務める木村哲夫先生はこう話します。
「がんなどの重大な病も、早期に発見できれば多くの場合治癒し、より早い社会復帰へ繋げることが出来ます。患者さんの健康によりインパクトのある仕事をするには、この「早期発見」こそ価値があるのではと考えています」。
2017年からクリニックグリーンハウスで勤務している木村先生。これまでに徳島大学病院での勤務やコーネル大学医学部(米ニューヨーク州)への留学などを通じて、様々な消化器疾患の治療について研鑽を積み、現在はその知見やご経験を自院での診療に注いでいます。
今回はクリニックグリーンハウスの取り組みの中でも、特に消化器がんの早期発見に絞ってお話を伺いました。
「来年も受けよう」と思える内視鏡検査を
胃や大腸にできるがんの早期発見には、病変を直接観察できる内視鏡検査が欠かせません。定期的な受診も重要になります。
「がんの早期発見のためには、来年もまたクリニックグリーンハウスで内視鏡検査を受けようと思っていただく必要があります。そのためには苦痛の少ない内視鏡検査が第一です。さらに検査前後の患者さんへの対応や説明も丁寧に行うことで、検査への抵抗感がなくなるよう常に心掛けています」。
木村先生は、患者さんの苦痛が少ない内視鏡検査に必要な点にも触れました。
「内視鏡医の技術に左右される部分が当然ながら大きいです。加えて内視鏡設備も重要です。仮に同じ技術力の内視鏡医が検査するのであれば、最新のデバイスを使うほうが、診断精度の向上はもちろん、患者さんが感じる苦痛は確実に少ないはずです」。
さらに、鎮痛剤・鎮静薬を使用して内視鏡検査を行うことも有効な方法だと話します。
「当院でも鎮痛薬・鎮静剤を使用して内視鏡検査を行うことがあります。しかし、検診目的での内視鏡検査では、これらの薬剤を使用し患者さんの意識を落として検査を行うことはガイドライン上推奨されていません。そのため当院でも安全性を重視して、人間ドックや検診での内視鏡検査では原則としてこうした薬剤は使いません」。
鎮静剤を使わない内視鏡検査では、苦痛を与えない「内視鏡医の技術」がなおさら重要になってきます。また、検診で見つかるがんは数mm程度の小さなものもあり、これを決して見逃さない「正確な眼」も必要となります。
「『苦痛がない内視鏡検査』と『小さながんも見逃さない精度の高い検査』。これらを両立させるべく、目の前の患者さんと対峙する毎日です」と木村先生は笑顔で内視鏡にかける思いを語ってくれました。その一例一例を積み重ね、年を追うごとにクリニックグリーンハウスの検査数は増え、今では年間4,000例ほどの内視鏡検査をこなすといいます。
がんを早期に発見、1週間で社会復帰も
「大学時代はひたすら内視鏡検査の研鑽を積みました。さらに医師になってから7、8年経った時期は、自身の内視鏡の腕がどんどん上がるのを実感して毎日が楽しかったのを覚えています」と徳島大学医学部の消化器内科に在籍していた当時を振り返ります。
昨日できなかったことが今日できるようになるという成長期。一方で「その後、経験を重ねるにつれて成長カーブが緩やかになり、危機感も感じるようになりました」と話します。
そうした時期に、務めていた徳島大学消化器内科の主任教授から海外留学をするよう命ぜられました。木村先生は、アメリカのニューヨーク州にあるコーネル大学医学部にて、さらなる研鑽を積む機会を得ました。
現地で基礎研究などに2年間取り組んだ後、帰国すると今度は徳島大学病院で助教(消化器内科)として勤務。そこで木村先生は、腫瘍の原因や治療法を研究するオンコロジー(腫瘍学)に取り組むうちに、がんへのかかわり方が変わるきっかけを経験したといいます。
「大学病院での私の外来には、進行がんの治療のため紹介されてくる患者さんが数多くいらっしゃいました。もちろん我々は抗がん剤や放射線治療などできる限りの方法を駆使して治療にあたります。がんが縮小すれば患者さんも楽になり、そのことにとてもやりがいを感じていました。けれども遠隔転移を有する進行がんが根治することは残念ながらまれだと言わざるを得ません。最愛の家族を残して亡くなってしまう患者さんをたくさん目にしてきました」。
「一方で、胃がんや大腸がんは早期がんでみつかれば9割以上の確率で根治します。しかも、内視鏡治療で切除できれば入院期間は1週間ほどで、その後の生活の質が変わることもなく社会復帰できます」。
どちらが患者さんにとってよいかは明白だと木村先生は言います。
「消化器がんにおいては、早期発見に携わる内視鏡をすることが患者さんの健康によりインパクトがある仕事ができるのではないかと思うようになりました。これからもその道を邁進したいと思います」。
医師になった当初から内視鏡医に憧れていたという木村先生。診断と治療を一貫して手がけられる点に魅力を感じていたといいます。大学病院で長く内視鏡治療に携わり、海外留学を経て基礎研究や臨床腫瘍学など多面的な「がん」とのかかわり方を経験し、現在ではクリニックグリーンハウスの院長として「がんの早期発見」という信じる道に注力。多くの患者さんの健康に貢献されています。