Article内視鏡医「患者様に寄り添った医療を(前編)」圷大輔先生(筑波胃腸病院 内視鏡センター長)2022/08/31

「患者様に寄り添った医療を(前編)」圷大輔先生(筑波胃腸病院 内視鏡センター長)

目次

gastroAI onlineでは内視鏡医の先生方に役立つ情報を中心に、情報を発信しています。本稿は茨城県つくば市に位置する筑波胃腸病院 内視鏡センター長 圷(あくつ)大輔先生に、内視鏡診断および内視鏡AIに関するインタビューをさせていただきました。
筑波胃腸病院は内視鏡センターを立ち上げ、地域有数の検査数を誇る施設です。是非内視鏡医の先生方はご覧ください。

患者さん中心の内視鏡検査を提供する筑波胃腸病院

患者様に寄り添った医療を

茨城県つくば市に位置する筑波胃腸病院は30年以上の歴史を重ねています。地域に寄り添い患者への負担がないことを第一に考え、診察・治療の経験が豊富な医師が駐在しています。

筑波胃腸病院では、内視鏡検査に加えて内視鏡治療も行っており、他院からの患者さんの紹介も受けています。またがんを早期発見できるように検診にも力を入れています。そのため、昨今の感染症により内視鏡検査が減っている施設もありますが、筑波胃腸病院では内視鏡検査数は年々増加しています。

消化器専門病院として上部・下部消化器内視鏡検査を2020年には6,000件以上を行い、県内では有数の症例数を誇る病院です。また患者を思い無痛内視鏡検査や女性スタッフのみによる検査、最新の内視鏡機器を用いた検査など県内では少ないサービスの提供もしています。そのため、口コミで視鏡検査を希望される方が増えています。

対応している内視鏡検査数は多いですが、常勤医4名と外勤医師3名、10名弱の内視鏡のスタッフが患者さんをお待たせしないように創意工夫を重ねています。

また、理事長の鈴木先生にご理解いただき、患者さんのために病変の見逃しをより減らせるように最新の内視鏡のシステムを導入しています。県内では比較的早い段階で導入されたと思います。

また、スクリーニングの患者さんが多いので、患者さんの負担を無くせるよう細径(経鼻用)のスコープも導入しています。

近年、生活習慣病の患者さんの数は増加傾向にあります。そのため、筑波胃腸病院では糖尿病や循環器の専門外来を行っており、多様な患者さんのニーズに答えられるようにしています。

県内トップクラスの検査数を誇る理由

病院の理念でもある患者さんに寄り添った医療を提供しているところです。患者さんが求めるサービス例えば、茨城県内では数少ない静脈麻酔剤を用いた無痛内視鏡検査や平日が忙しくても土日でも検査・治療を行えるサービス、近隣の方への送迎サービスなどがあります。そういったサービスが患者さんに受け入れられやすいから当院に来院してくださると思います。

生活習慣病の患者さんが増えている中で、悪性腫瘍の中でも消化器がんは死因の上位を占めていますが、早期発見すれば治療も可能です。そのため、当病院では早期発見・治療できるように検診にも力を入れています。当院でもがん検診に注力しており、さらに他院からの患者さんも受け付けています。内視鏡ブースも増設しているのでより多くの患者さんの受け入れが可能になり、さらに最新の内視鏡機器を導入して様々なシチュエーションで患者さんへの負担が減るような取り組みが患者さんに選ばれている理由だと思います。
あとは、変わらない医療を提供するための優秀な内視鏡スタッフが当院には駐在していて、患者さんとの信頼関係を築けていることです。

内視鏡AIへの期待

AIメディカルサービスの内視鏡AIはPMDAとの性能評価試験のプロトコルの検討が完了し、2021年6月に性能評価試験を行いました。内視鏡AIが内視鏡医の先生方に使っていただくことも現実味をおびてきましたが、現状の内視鏡検査の課題や内視鏡AIへの期待を伺いました。

除菌後胃がんの鑑別

内視鏡検査においては今も様々な問題があると思います。病変の検出はもちろんのこと、誰が見てもわかる病変に対しても、病変部位が実際にがんなのか非がんなのかの判断をしてくれるような鑑別の支援があると有用だと思います。
特に上部消化管内視鏡に関してはピロリ菌除菌が一般化してきている中で、除菌後の胃がん検出が難しいのかなと思います。また、悪性病変と思ってもどこまでががんなのかどこから非がん粘膜なのかは判断が難しい症例もあります。除菌前のがん病変については、発赤や形態が分かりやすい病変もあり、内視鏡医もある程度判断できると思います。しかし、除菌後の地図上陥凹やタコイボびらん(隆起型びらん性胃炎)については、経験のある医師やNBIで拡大観察をすればがんとわかる病変もあると思いますが、早期がんの鑑別が難しい症例もあると思います。そのため、内視鏡医にとってはそんな状況でも鑑別ができるような内視鏡AIがあれば有効ではないかと思います。

早期胃がんの検出

除菌後の慢性炎症が強い状態で、陥凹はしているがそこまで不正な構造をしていない胃がんや炎症が強く周囲粘膜との境界が不明瞭な症例などは内視鏡医であっても見逃してしまうリスクはあります。また、ピロリ菌未感染胃がん(胃底腺型胃がんや未分化型がんなど)の検出も難しい場合もあるかと思います。

医師の成長の機会に

スクリーニングをされる健診センターなどの先生は特に内視鏡AIを必要としてくれると思います。学会などで著名な先生方はご自身の目で診断できると思いますが、経験の浅い先生や、内視鏡が専門ではない先生は検査をやりながら病変を見つけて、診断をして、結果を見てというサイクルを繰り返して経験値を高めていくものと思います。

今はがんと疑わしい病変に対してはNBI拡大観察などを除くと生検するしか確認手段がないですが、近年抗血栓薬を多数服用する患者さんも増えて生検による出血のリスクが高くなっており、生検をするにはどうしても患者さんの負担・リスクにつながるので、生検せずとも答え合わせのできるような補助AIがあれば若手の先生方にとってもいい学習の機会になると思います。

また、病変かどうか疑うことができなければ経験していくことは出来ないので、微かに内視鏡に映った病変をAIが拾い上げてくれるようになれば、病変の見逃しの低下や医師の成長につながると思います。ベテランの医師においても少なからず観察や検査の癖があると思いますので、その辺りによる見逃しなどもAIで補っていけるのではないかと期待しています。

これらにより、病変の見落としの減少や早期発見に繋がることでがんによる死亡率も下げられるのではないかと期待しています。