Article観察・診断【動画あり】「色調コントラストの重要性とLCIの特徴」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 2(自治医科大学・大澤博之先生)2022/08/31

【動画あり】「色調コントラストの重要性とLCIの特徴」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 2(自治医科大学・大澤博之先生)

目次

株式会社AIメディカルサービスでは、大澤博之先生(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 准教授)に、内視鏡検査におけるがんの見落としとそれを防ぐための色調を考慮した診断法について「新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング~LCIの基礎から応用まで~」という題目にて、講演会を開催していただきました。本稿では講演会の内容を4パートに分けてご紹介いたします。
Part2では、LCIの特徴と色調コントラストの有用性について、自治医科大学で行ったstudyや内視鏡検査の症例をベースに解説していただきました。

胃がんの拾い上げ診断においては解像度よりも色調コントラストの方が有用性が高い

LCIでは色で病変を見分ける

LCIによる観察では、色によって病変を鑑別することができます。色の変化は大きく2つ:オレンジ色と紫色に分かれます。オレンジ色はがんの可能性があることを示します。一方で、

LCIでは色で病変を見分ける

紫色はがんではなく炎症の可能性が高いことを示します。つまり、LCIによって鑑別を行う際には、色の違いに着目することが非常に大切になります。

なぜ、LCIでは色調がオレンジ色と紫色に分かれるのか?

LCIによる観察では色調による強弱を観察して診断をしていきますが、色調は大きく分けるとオレンジ色と紫色の2色になります。症状によって色調が変化する理由は、短波長(可視光線のうち、波長の範囲の短い青色・紫色)の吸収・反射が関係しています。例えば、高分化腺がんの場合には粘膜表面に腺管が密集しているため、410nmの紫色、450nmの青色の短波長は吸収されやすくなり、緑と赤が最終的に残りオレンジ色となります。一方で、中分化腺がんの場合には、粘膜表面に腺管が伸びきっておらず密集していないため、短波長は反射されやすくなり、全ての色が残り紫色になります。

LCIでは色で病変を見分ける

胃がんの拾い上げ診断において、解像度よりも色調コントラストの方が有用性が高い

胃がんの内視鏡検査では解像度よりも色調コントラストの方が大きな役割を果たします。

胃がんの拾い上げ診断において、解像度よりも色調コントラストの方が有用性が高い

LCIが早期胃がん発見に与える影響を特定するために、自治医科大学では早期胃がん56例と萎縮性胃がん33例を用いて検証実験を行いました。1つの症例(動画撮影)に対して、経鼻内視鏡(WLI、LCI)と経口(WLI、LCI)の計4パターンに分け、内視鏡専門医3名で読影を実施しました。検証結果として、WLIは経鼻と経口LCI両方よりも感度が劣ることが分かりました。また、1つの症例を4パターンに分けており経鼻内視鏡と経口内視鏡の比較ができることから、解像度が低い経鼻内視鏡のLCIが、解像度が高い経口内視鏡のWLIよりも感度において優れていることがわかります。このことから、胃がんの拾い上げ診断において、解像度よりも色調コントラストの方が有用であることが示唆されました。

LCIは胃がんの視認性に最も影響を与える重要な因子

自治医科大学で集めた早期胃がん508症例を用いて、胃がんの視認性に関する多変量解析を行ったところ、LCIが最も視認性の高い因子であることが分かりました。その他の要因に対して、「隆起型」「Submucosal:粘膜下層(に浸潤しているがん)」といった因子も視認性は高いですが、これらの特徴は色調コントラストが出やすいものです。つまり、胃がんの拾い上げ診断においては、隆起や平坦といったがんの突起構造を捉えることよりも、LCIを用いて色彩を強調して鑑別を行うことの方が、有効性が高いことが示されています。

LCIは胃がんの視認性に影響を与える最も重要な因子

また、こちらの研究は、上部消化管内視鏡スクリーニングにおけるLCIの有用性を検証するための、消化管がん既往患者を対象とした前向きの検討です。白色光では752例中37例の上部消化管がんを発見しましたが、LCIを用いることで更に26例、全体の41%にあたるがんを発見できたことが報告されています1)。

1) Linked Color Imaging Focused on Neoplasm Detection in the Upper Gastrointestinal Tract : A Randomized Trial/Shoko Ono/Annals of Internal Medicine/M19-2561. Epub 2020 Oct 20.

LCIが白色光では見えない胃がんを可視化する

白色光とLCIで撮影された画像の比較


白色光とLCIで撮影された画像の比較

白色光とLCIで撮影された画像の比較

具体的な症例で見ていきましょう。1枚目は白色光、2枚目はLCIで撮影した画像です。2枚目の画像の紫色は炎症を示し、オレンジ色に染まった部分は胃がんを表しています。ご覧の通り、白色光で撮影した場合に比べ、画像強調内視鏡診断で撮影した場合の方が、鮮明に色調の違いに表れていること分かります。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

こちらの症例は、白色光で観察すると潰瘍瘢痕の様にも見えます。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

しかし、LCIに切り替えると、非常に小さいですが、紫で囲まれたオレンジ色になっている様子がうかがえると思います。一方でこの症例の様に、病変の範囲が100%紫色で正確に囲まれるとは限りませんので、ご注意下さい。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

さらに6時の方向に向けて、BLIで拡大するとこの無構造の中にこのチリチリした血管があることがわかると思います。典型的な未分化癌の所見です。

このように、画像強調内視鏡診断による色彩強調は、胃がんの早期発見に非常に有効であることが分かります。実際に、自治医科大学において治療した同時多発早期胃癌の症例数は、白色光のみで治療していた2005年頃までは、年間で平均5例ほどでしたが、FICEそしてBLIを導入したところ、年間で約50例まで増加しました。逆を言えば、白色光で見ていた頃は10例に9例の割合で同時多発早期胃癌を見逃していた可能性があります。

大澤博之先生による解説動画

本稿でまとめている講演内容は、下記URLより動画で閲覧いただけます。内視鏡医の先生方のご参考になれば幸いです。 https://endo.ai-ms.com/media/videos/3393