Article観察・診断胃底腺型胃癌の内視鏡診断のコツ、病理学的特徴も踏まえて解説2023/03/31
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胃底腺型胃癌は、2010年に上山浩也先生(順天堂医院 消化器内科 准教授)らが報告された特殊型胃癌の一種です。胃がんに占める割合は約 1.6 %と報告されており、比較的稀な組織型です。ただし、胃底腺型胃癌は、H.pylori未感染胃癌の一つと考えられているため、H.pylori未感染胃癌の増加に伴い、全体に占める割合は多くなると同報告は予想しています。
しかし、「胃底腺型胃癌の診断や治療の経験が無い場合、一般的には内視鏡診断、病理診断は比較的困難と考えられ、最終的には消化管専門病理医に病理学的に確定診断されるのが現状」と同報告は指摘しています。こうした現状を踏まえ、胃底腺型胃癌の提唱者の一人である上山先生は、次のように述べています。
「胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴を理解することに加え、通常内視鏡で胃底腺型胃癌を疑う所見を見落とさないことが重要。さらに胃底腺型胃癌を疑う病変を生検した場合には、的確な情報を病理医へ伝える必要があります」
上山先生は、セミナー「特殊型胃癌の内視鏡診断」(2022年9月29日開催)において、「胃底腺型胃癌を診たことがない先生方もいるので、まずは典型的な特徴を押さえることが重要」だと話します。
本記事では、上山先生がセミナーで紹介した胃底腺型胃癌の特徴や診断のコツなどについてまとめます。
胃底腺型胃癌の定義と分類
胃底腺型胃癌はあくまで総称
まず胃底腺型胃癌の定義について、上山先生は「胃底腺への分化を示す分化型腺癌であり、免疫染色ではpepsinogen-IやH+/K+-ATPaseが陽性となる胃腫瘍」だとしました。その診断基準については、「基本的には腫瘍全体の10%以上に胃底腺への分化を示す分化型腺癌が認められること」と説明します。