Article観察・診断【動画あり】「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 5(自治医科大学・大澤博之先生)2022/09/07

【動画あり】「胃がんと内視鏡診断の基礎知識」特別講演:新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング Part 5(自治医科大学・大澤博之先生)

目次

株式会社AIメディカルサービスでは、大澤博之先生(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 教授)に、内視鏡検査におけるがんの見落としとそれを防ぐための色調を考慮した診断法について「新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング~LCIの基礎から応用まで~」という題目にて、講演会を開催していただきました。本稿では講演会の内容を5パートに分けてご紹介いたします。

なお、講演内容については、本投稿下部によりYoutubeにアクセスし、動画でご覧いただくことが可能です。

本記事では、Part5としてさらなる症例紹介と、Part1から4までの内容を総括していただきました。

複数の疾患が疑われる病変を鑑別するため周囲の色調と比較することが有用

ある一つの病変を観察したときに複数の疾患が鑑別に挙げられることがあります。LCIではどのように鑑別していけばいいのでしょうか。その方法は、領域として捉えられる部位の色調とその周囲粘膜の色調を比較することで鑑別しやすくなります。いくつか症例を紹介いたしします。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

こちらの症例は、白色光像で観察すると小さな潰瘍瘢痕の一部のようにも見えます。
白色光観察だけでは腫瘍を疑わない内視鏡医もいるかもしれません。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

しかし、LCIに切り替えると非常に小さいですが、紫で囲まれた領域性のあるオレンジ色病変を認めます。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

さらにBLIで拡大すると無構造の中にこのチリチリとした血管があることがわかります。典型的な未分化癌の所見です。ESD治療で完全切除できました。診断のきっかけはLCI観察を行ったためです。診断できる観察法を選択することが重要になってきます。

LCIがきっかけで発見できた未分化がん

幽門部付近におけるビランと癌の鑑別

幽門部付近におけるビランと癌の鑑別
幽門部の症例です。ビランと癌の鑑別は難しいですが、LCI観察では周囲のオレンジ色よりも赤味があり、癌と診断をすることができます。LCIでは幽門前庭部全体において組織の違いを色調によって区別していることがわかります。

微小胃癌の鑑別でもLCIが役立つ

微小胃癌の鑑別でもLCIが役立つ

この症例もかなり難易度が高いケースだと思います。微小胃癌でもオレンジ色が紫色に囲まれています。さらに周囲の萎縮のオレンジ色と比較して、がん病変の部位が濃いオレンジになっていることがわかります。癌のオレンジ色は周囲のオレンジ色よりも濃いことが多い。

表面構造だけでは判断できない症例

噴門部近くの病変で表面構造は正常に見えます。一部に生検後変化を認めます。

表面構造だけでは判断できない症例

しかし、LCI観察では病変には領域性があり、さらに周囲のオレンジ色よりも赤みが強いことがわかります。これも癌を疑う所見です。

表面構造だけでは判断できない症例

ESD後組織像を示します。粘膜中間層に手つなぎ型腺癌を認めます。粘膜表面では窩間部が開大していますが、癌の所見は認めません。LCIは粘膜中間層の情報を捉えることができます。LCIは粘膜中間層の癌でも色調の違いとして描出しています。また、粘膜浅層の低い腺管密度も色調に影響しているかもしれません。

表面構造だけでは判断できない症例

食道がんの観察におけるLCIの可能性

食道がんの観察におけるLCIの可能性
食道がんについてもLCIが有用です。ヨード染色後の食道ですが、右上の白色光像(ピンクカラーサイン)に比べ、左下のLCIでの観察(パープルカラーサイン)、右下のBLIでの観察(グリーンカラーサイン)の方が、視認性が高くなっています。

食道がんの観察におけるLCIの可能性

また、バレット食道がんにおいても、LCIで観察することで周囲よりもオレンジ色が濃いあるいは赤味の強い領域性のある部位を視認することができて、がんを発見できる可能性を高めることが示唆されます。

見えないがんを見えるがんに変え、胃がんの見逃しを防ぐ

本講義のサマリーです。
見えないがんを見えるがんに変え、胃がんの見逃しを防ぐ
結論として、LCIを用いて白色光観察における約40%の早期胃がんの見逃しを回避することが可能と考えられます。その理由の一つとしてLCIは白色光像では捉えることが難しい「見えない癌を見える癌にする」ことができるからです。LCIは医師の診断を助けるというよりも診断の中心となるべき診断法です。LCI観察を習得すれば白色光観察には戻れないというのが内視鏡医からよく耳にする言葉です。見逃しが少ない方法と患者に伝えれば患者の不安も解消して高い信頼性が得られ医療の安全性にも大きく貢献すると考えています。

また、LCI観察においては、種々のオレンジ色の胃癌診断を学ぶことと、紫色粘膜の診断における3つの特徴を頭に入れておくが基本となります。しっかりと押さえておくようにしましょう。さらに食道がん観察においてもヨード染色後やバレット食道がんなど、LCIが有用な症例がありますので合わせて覚えておきましょう。

大澤博之先生による解説動画

本稿でまとめている講演内容は、下記URLより動画で閲覧いただけます。内視鏡医の先生方のご参考になれば幸いです。 https://endo.ai-ms.com/media/videos/3393