株式会社AIメディカルサービスでは、大澤博之先生（自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 准教授）に、内視鏡検査におけるがんの見落としとそれを防ぐための色調を考慮した診断法について「新たなステージに向かう内視鏡スクリーニング～LCIの基礎から応用まで～」という題目にて、講演会を開催していただきました。本稿では講演会の内容を5パートに分けてご紹介いたします。

なお、講演内容については、本投稿下部によりYoutubeにアクセスし、動画でご覧いただくことが可能です。

本記事では、Part4としてこれまでご紹介した症例よりも、難易度がより高い症例における色彩強調の活用について解説していただきました。

LCIが内視鏡医の判断を支える

幽門輪部も色彩強調で可視化

こちらは幽門輪部の症例です。白色光でもがんだと診断できる内視鏡医もいると思いますが、この部位は時折判断に迷うような悩ましい症例が出てきます。

しかし、LCIで観察すると、白い矢印の箇所が、紫に囲まれたオレンジになるという典型的なパターンになります。自信をもってがんだと診断できるようになるでしょう。

色彩強調はがんと炎症性病変の鑑別に自信を与える

上記の症例は、白色光で観察したところ一見胃炎に見えます。

しかし、LCIで観察すると2か所とも赤みが強いオレンジ色で示されます。こちらは、重複胃癌（double cancer）でした。たぶん大丈夫だろうと思っていても、こうして色彩強調でしっかり観察することで、見えなかったがんを発見することができます。白色光を用いた鑑別では、炎症とがんを区別することが困難でしたが、色彩強調を用いることで、内視鏡医の鑑別の精度は向上し、自分の診断にも今まで以上に自信が持てるようになります。

この症例では、左側の白色光ですと、褪色調・白っぽい病変が散見され、全て炎症性病変ではないかと考えてしまうかもしれません。しかし、LCIにすると複数の矢印の中で赤く囲われた白の矢印の箇所だけOrange white（白っぽいオレンジ色）に見え、がんだと診断できます。

判断できなくても胃癌の疑いを絞り込むことが可能

この症例では、浅い陥凹や軽度の隆起等、様々な凹凸があり、どう診断すれば良いのかわからなくなりそうです。

LCIで観察した場合には、青い丸の箇所は薄いオレンジ色、赤の丸は濃いオレンジ色になり、違いがわかるようになってきます。

更にBLIで少し拡大して観察すると、一番右側は表面構造から正常であることがわかります。残りの2つ（赤い丸の箇所）は、イレギュラーであることから、がんの可能性が残ります。このように、色彩強調を活用することで複数候補がある中から、がんでない病変を特定し、がんを疑う病変を絞り込むという診断方法もできるようになります。

病変の特徴よりも視認性があるLCI

白色光を用いた早期胃がんの症例診断で、視認性が高いとされているのは隆起型の胃がんです。

LCIでは隆起型の胃がんよりも色彩コントラストが明確であるため視認性が高く鑑別を行いやすい特徴があります。

LCIの強みはカテゴリ―分類した診断ができること

白色光とLCIの決定的な違いは、LCIは診断結果をカテゴリ―毎に色調を通じて分類ができることです。これはLCIの特徴でもあり強みでもあります。白色光で診断をした場合、正確な分類ができるかは内視鏡医の視覚情報に依存してしまいます。しかし、人間の視覚認識は正確ではないため、誤認してしまう可能性があります。一方で、LCIは正常、炎症、がん疑い、がんを色調を用いて明確に分類することが可能です。また、LCIは分類だけでなく微小胃がんやビランとの鑑別や未分化がんの識別も行うことができます。

瞬時の判断が求められる内視鏡スクリーニング検査

内視鏡のスクリーニングでは瞬時の判断が求められます。見逃しは患者の不信感を募らせてしまう一方で、患者さんの負担等を考えると長い時間じっくりと内視鏡検査をやっているわけにもいきません。内視鏡医は、時間とも戦っています。経験の少ない内視鏡医でも、短い時間で自信をもって的確に判断するためには、LCI、BLIを用いることが重要です。白色光とは異なり明確な基準で病変を鑑別できる色彩強調は、内視鏡医の診断を大きくサポートすることが可能になります。

大澤博之先生による解説動画

本稿でまとめている講演内容は、下記URLより動画で閲覧いただけます。内視鏡医の先生方のご参考になれば幸いです。 https://endo.ai-ms.com/media/videos/3393