Article内視鏡AI8割超が「内視鏡AIによる診断能向上に期待」 青森・医師向け意識調査2024/04/26

8割超が「内視鏡AIによる診断能向上に期待」 青森・医師向け意識調査

目次

「最近では内視鏡検査中に認識しにくい病変に遭遇する機会が増えてきています。(中略)そのような中、診断補助をしてくれるAIシステム、Computer-aided diagnosis、CADが注目を浴びています」。

このように話すのは弘前大学・消化器血液内科学講座の菊池英純先生。第171回 日本消化器内視鏡学会東北支部例会の共催セミナー「AIが変える未来の内視鏡診療(共催:株式会社AIメディカルサービス)」における発言です。

内視鏡検査はがんを早期発見するために有効な手段ですが、上部消化管・下部消化管共に内視鏡検査では一定数の見逃しがあるとの報告があります。菊池先生は「小さな病変や色調変化に乏しい病変、隆起や陥凹に乏しい病変というのは常に見逃しの危険性がある」と話します。

弘前大学では見逃しを減らすために、専門医などがモニターで各検査室の様子や画像をチェックするのに加え、上部・下部消化管の内視鏡AIを導入。更に地域の医師向けに内視鏡AIの体験会やワークショップを開催する等、内視鏡AIを積極的に活用・啓蒙しています。

今回菊池先生は、弘前大学の関連病院の医師向けにアンケート調査を実施。近年注目を浴びる内視鏡AIについて期待する点や懸念点を問い、その回答結果を報告しました。

医師89名が回答、若手からベテランまで

まず菊池先生は背景情報について紹介しました。アンケートは弘前大学の関連病院に勤務する108名の消化器内視鏡医に送付され、そのうち89名(82.4%)が回答しました。

回答者の医師経験年数は21年以上が39%、11年~20年が27%、10年以下が34%と、バランスの取れた回答結果となりました。

また指導医・専門医の割合は合わせて79%と、内視鏡検査の経験がある医師が占めていました。

内視鏡AIの使用経験(試用やハンズオン)については、上部・下部共に一定の経験がありつつも、実臨床での使用経験については「上部・下部いずれも使用経験なし」の回答が7割を超えました。

使用経験があると回答した医師のポジティブな感想としては「精度高く、病変を指摘してくれる」「検査に安心感がある」「観察範囲が広がる印象がある」といったものが挙がりました。一方で「偽陽性が多い」「検査時間が長くなる」「画面の煩雑さ」といったネガティブな感想も認めました。

8割以上が「AI併用による診断能向上」に期待

アンケートは内視鏡AIへの「期待」「不安」を軸に構成されており、上述の背景情報を除き、以下の内容を問うものとなっています。

①AI併用における自身/内視鏡医一般の診断能向上への期待

②AIに期待する/不安な項目

③内視鏡AIの実臨床使用の意向と将来への期待

まずは内視鏡検査における内視鏡AIの併用が診断能向上に期待できるか、という質問です。対象は自身と内視鏡医一般に分かれています。

2つの質問の回答結果は同様の傾向を示しており、8割以上の回答者が「AIの併用により内視鏡医の診断能が向上すると思う」と回答。菊池先生もこの回答結果には「(医師がAIに対して)非常に大きな期待を寄せていることが分かります」とコメントしました。

続いて内視鏡AIにどのような役割を期待するか、という点についての質問です。

医師経験年数・専門医の有無に関わらず「病変の見逃しに対する指摘」が内視鏡AIに期待する項目として最も多くの回答を集めました。次いで回答数が多かったのは「教育効果」でした。

回答者の属性別で見ると、特に非専門医が教育効果に期待している様子がわかります。医師経験年数が11~20年の中堅医師及び専門医にとっては、病変指摘に加えて「質的診断」のニーズも高いようです。

AI活用の懸念点、属性別で異なる回答

AIに対して不安な項目についての質問では、全体的には「AIへの依存」「偽陰性(見逃し)」の回答が多く集まりました。

属性別の回答を見てみると、不安に感じる項目は非専門医とそれ以外で異なります。

非専門医は「偽陽性」が不安に感じるという回答が最も多い結果でした。

一方で、中堅医師や専門医・指導医は「AI依存」を最も心配な項目として回答。指導する立場にある経験の豊富な医師は、自身のAI依存ではなく、内視鏡経験の浅い医師の”適切な”AI活用を望んでいることが、この結果に反映されていることが考えられます。

また偽陽性よりも「偽陰性」「侵襲増加」といった項目の回答が多く集まり、非専門医の回答とは異なる傾向がみられました。

内視鏡AIに将来的に期待することは?

内視鏡AIの研究開発は日進月歩で進んでおり、将来的に様々な機能改善・拡張が期待されます。本アンケートの質問「今後、内視鏡AI診断補助システムを実臨床で使用したいと思いますか」に対しては、回答者の78%が「(使用したいと)思う」と回答しました。

また「内視鏡AIに将来的にどのようなことを期待するか」という質問(自由記述)には、診断補助や観察不十分な部位の指摘、教育効果やコストの低下、地域/施設格差の解消等といった意見が出ています。

菊池先生は上記の意見に関連して参考文献を紹介しました。

「AIの普及による早期胃がん診療の社会的な費用対効果を検討した論文です。医師と医師+AIの診断能を比較して、それぞれのコストの増減を計算し各患者さんの総医療費、生活の質を考慮した生存年を算出しています。

日本の早期胃がんの診療でAIを併用した場合、結果的に社会的な費用対効果が向上する可能性が示されています」。

加えて、内視鏡AI併用による医師への教育効果についての検討についても言及します。

「こちらの研究では若手医師を2つのグループに分け、内視鏡AIのフィードバックを受けるグループ、受けないグループで1回目の正診率を検討。その後内視鏡AIのフィードバックを受けたあとにもう一度診断能を検討したところ、内視鏡AIからフィードバックを受けたグループは診断能が向上したという報告です。

このように内視鏡AIを有効に使うことによって、医師の診断能の向上が期待されます」。

AIが普及した後の内視鏡診療とは

菊池先生は今後の内視鏡診療について、AIチャットサービス・ChatGPT(OpenAI社)に質問した結果を紹介。「AIの普及によって内視鏡医の仕事はどう変化するか?」という問いに対し、ChatGPTは5つの要点を回答しました。

ChatGPTは、上述のアンケートで医師が期待する項目として回答した「診断精度の向上」「教育効果」等に加えて、患者とのコミュニケーション等の人間的なスキルがより求められるようになる可能性が高まるという回答を提示し、菊池先生もこれに共感を示しました。

また内視鏡AIの臨床使用については日本消化器内視鏡学会の管理指針(一部抜粋)を紹介し、「AI併用検査が普及するとともに、適切な運用体制の構築に期待する」としています。

菊池先生はアンケート回答者に感謝の意を示し、今回のアンケート・調査結果を以下の通り総括しました。