Column観察・診断新規感染が疑われたNHPH感染胃炎の2例【期間限定オンデマンド配信】2025/11/20

新規感染が疑われたNHPH感染胃炎の2例【期間限定オンデマンド配信】

2025年10月29日(水)に開催された、「新たに胃病変を考える会 2025 ~経験で診る。技術と診る。~」において、松本美桜先生(北海道対がん協会 札幌がん検診センター)が発表された「新規感染が疑われたNHPH感染胃炎の2例」を期間限定でオンデマンド配信しています。

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【背景】

Gastric HelicobacterのうちH. pyloriは特異的にヒトの胃に感染する菌であるが、Non-Helicobacter pylori Helicobacter(NHPH)は人獣共通感染症としてヒトに感染し、ブタが宿主であるH. suisやネコ・イヌが宿主のH. heilmanniiなどが含まれる。最近ではNHPH感染と胃疾患との関連性が注目されているが、その感染時期や自然史についてはまだ明らかになっていない。

 今回我々は、NHPH感染胃炎と診断された11例について経時的な内視鏡所見を検討することで、新規感染が疑われた2例を経験した。

【症例1】

60歳代女性。X- 2年の検診EGDでは胃内に萎縮や炎症所見を認めずH. pylori未感染との診断であった。X年に再度検診でEGD施行したところ、胃前庭部に鳥肌様変化を認めた。X+1年には鳥肌様変化は胃角に及び、前庭部にはひび割れ様変化も出現し、胃内液のPCR検査にてNon-suisのNHPHと診断した。問診にて、本人宅でのペット飼育歴はないが、実家での飼育歴が判明した。除菌治療希望されず、現在経過観察中である。

【症例2】

40歳代男性。X-1年、X- 2年の検診EGDでは胃内に萎縮や炎症所見を認めずH. pylori未感染との診断であった。しかしX年の検診EGDでは胃前庭部から胃角付近まで、発赤とびらんが出現していた。胃内液のPCR検査ではH.suisが検出され、NHPH感染と診断した。問診では、出張が多くどこかで豚ホルモンを摂取したと思われるとのことであった。感染確認後、ボノサップにて除菌治療施行。X+1年のEGDでは発赤・びらんは軽減し、若干胃角付近に白斑変化を認める程度であり、胃炎は改善傾向であると判断した。

 症例1、2共に明らかな自覚症状は認めなかった。

【考察】

H. pyloriはおおよそ5歳くらいまでに感染し、萎縮性胃炎を引き起こすとされている。一方でNHPHは幼少期に感染するのか、成人期に感染するのかは明らかになっておらず、今回の2例の経験から成人で新規感染する可能性が示唆された。

【結語】

NHPHの新規感染を疑う症例を経験した。今後も症例を集積し、感染時期につき検討が必要である。

【発表者・共著者】

松本 美桜1、津田 桃子1,加賀谷 英俊1,江原 亮子1,加藤 元嗣1,間部 克裕2

1.公益財団法人 北海道対がん協会 札幌がん検診センター

2.まべ五稜郭消化器・内視鏡クリニック