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コラム

AI導入で胃がん発見率はどう変わる?N=38,000超の大規模リアルワールドデータが示す臨床的インパクト

内視鏡AI

2026年5月8日に開催された第111回日本消化器内視鏡学会総会(JGES)のワークショップにて、仙台循環器病センターの中里雄一先生より、gastroAI model-G2(以下、gastroAI)の臨床効果に関するデータが発表されました。

世界内視鏡機構(WEO)が「日常臨床における有用性のエビデンス」を求める中、大規模リアルワールドデータ(RWD)を用いた検証です。日々、微小病変や平坦型病変の「見逃しゼロ」に挑む内視鏡医の皆様に向けて、そのエビデンスの全貌をダイジェストでお届けします。

 

1.エビデンスの信頼性:N=38,000超の母集団

これまでの内視鏡AI研究の多くは、選別された静止画による評価や小規模な臨床試験に留まっていました。
本研究は、年間13,000件以上の上部消化管内視鏡検査をこなすハイボリュームセンターの「生データ」をベースにしています。

  • AI導入前(ヒストリカルコントロール): 23,242例
  • AI導入後: 14,792例

年齢、性別、検査目的(スクリーニング/外来)といった共変量を調整した多変量解析を行っています。

 

2.主要アウトカム:発見率向上とPPV維持が両立するか

内視鏡医がAI導入において最も懸念するのは、「AIが過剰に反応して生検が増え、日常臨床のワークフローに悪影響を与えないか」という点ではないでしょうか。
本研究が示したデータは、重要な示唆を与える非常に興味深いものでした。

【AI導入前後の臨床成績比較】

Fig.1にAI導入前後の累積平均検出率の推移を、Table.1にAI導入前後の各パラメーターの変化を示します。
これらより、AIのサポートによって胃がんのベースライン発見率が有意に向上(OR 1.18)している一方で、陽性的中率(PPV)の低下はわずか1.0ポイントに抑えられています。これは、AIが単に「怪しい部位を無差別に指摘して生検を増やした」のではなく、「臨床的に意味のある病変を的確に拾い上げた」可能性を示唆しています。

Fig.1:AI導入前後の累積平均検出率

Table.1:AI導入前後の比較

評価指標AI導入前 (N=23,242)AI導入後 (N=14,792)臨床的インパクト
胃がん発見率(オッズ比)1.001.18多変量解析で18ポイントの上昇
生検率3.7%4.7%1.0ポイントの上昇
陽性的中率 (PPV)17.7%16.7%1.0ポイントの低下

 

3.臨床医の視点:このデータをどう解釈するか?

本研究は中間解析という位置づけであり、以下の「臨床的なバイアスや限界点」についても真摯に言及されています。

ディスカッションすべき論点は以下の通りです。

  • 単施設における後ろ向き観察研究であること。
  • 医師の生検閾値の変化: 最終的な生検の判断は医師に委ねられているため、AIの指摘によって「念のため生検しておこう」という医師側の心理的閾値が下がった可能性(Detection Bias)は完全には排除できません。
  • 患者背景データの補正: 現時点では、背景胃粘膜の萎縮度(京都分類など)や、ヘリコバクター・ピロリ除菌歴、胃がん既往歴といった重要なリスク因子が多変量解析に含まれていません。最終解析でのデータ補正が待たれます。

 

4.医療DXがもたらす内視鏡の未来

経験年数や当日の疲労度による「診断のばらつき」は、多忙な臨床医にとっての課題です。今回のRWDは、gastroAIが医師のダブルチェック役として機能し、診断精度の標準化に寄与することを示す一歩と言えます。
今年度中に発表予定とされている「最終解析結果」では、さらに詳細な症例蓄積と背景因子の解析が行われる予定です。

 

販売名:内視鏡画像診断支援ソフトウェア gastroAI
医療機器承認番号:30600BZX00266000
製造販売業者:株式会社AIメディカルサービス