Article内視鏡医「内視鏡医の教育においては”言語化”がポイント」 野田啓人先生(日本医科大学付属病院 消化器内科)2022/09/25

「内視鏡医の教育においては”言語化”がポイント」 野田啓人先生(日本医科大学付属病院 消化器内科)

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gastro AI onlineでは、内視鏡医の先生方に役立つ情報を中心に、情報を発信しています。今回は、日本医科大学付属病院 消化器内科(東京)でお勤めの野田啓人先生に、現在の内視鏡診療における課題についてお伺いしました。

内視鏡AI等の比較的新しい研究は、どこまで実施されているのかがわかりづらい

先生が日々の診療、教育、研究等でお困りのことを教えてください

もちろん、大学病院の先生と一般診療所の先生、内視鏡の経験が長い先生とそうでない先生でニーズは変わってくる思いますが、自身の話をすると大学院を卒業して8年目、内視鏡による治療を始めて5年目の立場です。今回、論文を書き始めて思ったのですが、AIを絡めた内視鏡領域の研究は、既に多くの発表・論文化がされている中で、どこまでが既に研究されていて、どこからが未解明なのかがわかりませんでした。

医師のみなさんが使っている論文検索サイトを利用して調査しますが、自分が知りたい範囲より多くの論文が検索結果として表示されてしまうため、なかなかほしい情報を知って整理するということが難しいと感じます。特に内視鏡領域においては、静止画による研究はこれまで多く実施されているので、これからはリアルタイムを意識した動画による研究が中心になってくるのではないかと考えています。つまり、「静止画」「動画」どちらの研究であるかが一目でわかると、私のような立場の医師にニーズがあると考えます。また、それに加えて「部位別」「内視鏡のモダリティ(白色光、NBI等)別」で研究・論文を探せると良いですね。

教育における「言語化」の難しさ

若手医師の教育の観点で、課題感があればご教示ください

こちらも上記のニーズと同様で、教育される側、教育する側と立場によってニーズは変わってくると思います。教育される立場における課題感としては、ご教授いただいている先生に自身が検査・診断しているところを見ていただき、ご指導いただける機会が少なくなってきていることがあります。病変を見つけたときにどのように診断すればよいか、見逃している病変はないか等、迷って相談したいときに、必ずしも相談できる状況ではないので、そこが教育される立場にとっては課題だなと感じます。

一方で教育する立場としては、診断の過程をその場でゆっくり説明したり、難しい微細な手技について言語化することが難しいと感じています。現在私が教えているのは内視鏡を握って1年~2年目の先生たちですが、例えば鉗子の角度がスコープによって決まっており、大体7時の方向に出ているので、採る方向は必ず6時方向に持っていくこと、食道や胃でも空気をパンパンに張っている状態だと鉗子(と病変)が水平にならなく掴みづらいので、ある程度、脱気して、かつ写真が赤玉で潰れないようにすることを教えていたりしています。

しかし、言語化された指導内容を頭の中でわかっていても、スムーズに飲み込める先生もいれば難しく感じる先生もいます。自分の指や手をどのように動かせば良いか分かりづらいところ、感覚は人それぞれなところ、つまり指導内容をどのように言語化すれば再現性を担保できるかというところが、教育における課題になっているかなと思います。余談ですが、私の経験上では、ゲームが得意な人は指先の感覚に優れ、飲み込みが早い傾向がありますね。

やはり、数をこなすことは大切なので、何十回・何百回とその場を経験して、内視鏡操作を動かして失敗も経験して、としないと体に染み付かずうまく習得できないのかなと思っていますが、その過程をスムーズにできるものがあればありがたいですね。